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本当に日本の治安は悪化しているのだろうか
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「治安悪化」国民の75%が感じる…法務省調査(読売新聞)
正しく恐れたい治安の悪化(日経新聞)

■日本の治安が悪化したってよく聞くでしょ?
二言目には「治安が悪化した」と。
「おう!久しぶり!それにしても治安が悪化したね~」と。
本当に日本の治安は悪化しているのかな?




■世間では、犯罪が急増して、しかも凶悪化して、「日本の治安はもう無茶苦茶だ!」みたいな雰囲気になっています。
ところがどっこい。
実際はそんなこともないようなのです。

■たしかに一般刑法犯は近年急増しています。
それは事実。
でも自転車泥棒を除くと、微増にすぎません。
な、なんと!
そう言えば「自転車泥棒」って言う映画がありましたね。
これは窃盗罪です。

■実はと言うと、自転車窃盗の大幅な増加が全体の犯罪件数を押し上げていただけの話だったのです。
自転車をパクる奴が増えたから、犯罪全体が増えたように見えていたのか!
なんじゃそりゃ!

犯罪の凶悪化についても、
殺人罪は50年代から減り続けていて、ここ10年は横ばいの状態です。
あんまし変わらへんねん。
強盗はたしかに急増しているけど、その増加分はと言いますと、
ほとんどが少年の強盗
それも、ひったくり(本来は窃盗罪)の酷いものや、「オヤジ狩り」などの集団でのカツアゲ(本来は恐喝罪)の解釈を変更して統計に組み込んだせいだったのです。

検挙率が急降下しているけど、ほぼ窃盗犯の検挙率低下に相当しています。
警察が、軽微な余罪の追及には人員を回さなくなったかららしいです。

実のところ、そんなに日本の治安は悪化していないのです。
(詳しくは、河合幹雄著「安全神話崩壊のパラドックス」岩波書店)
じゃあ、どうして私たちは治安が悪化しているように感じるのだろう?

■おそらく日本が豊かになったことと関係しているのだと思います。
日本は豊かになりました。
高度成長時代だと、「豊かになりたい」という欠乏と夢が人々に共有されていました。
みんなが「カラーテレビなどの家電が揃った文化的な生活をしたい」と思った。

■ところが日本は豊かになってしまいました。
欠乏と夢が共有される時代が終わっちゃった。
何が幸せで何が不幸せなのかが人それぞれになりました。
不透明な社会です。
他人が何を考えているのかわからない。理解できない。

■犯罪の動機も同じ。
「なんであの性格の良い人があんな犯罪を犯したのだよ!」
とか
「あんな短絡的な動機で何であんな凶悪な犯罪を犯したのだよ!」
などの声がよく聞こえます。
それは何故かと言うと、不透明な時代だから。
日本は豊かになって不透明な時代になっちゃったから。

■本当は治安は悪くなっていないのに、人々が「治安が悪くなった」と感じるのは無理もありません。

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河合 幹雄 / 岩波書店
by asatte_no_houkou | 2004-11-10 02:38 | 犯罪・刑罰・裁判
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