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『反戦ビラ』訴訟、3被告に無罪判決
【反戦ビラ訴訟、3被告に無罪 地裁八王子支部】
自衛隊のイラク派遣反対を自衛官やその家族に訴えるビラを防衛庁官舎の新聞受けに入れたとして、住居侵入の罪に問われた市民団体の3被告について、東京地裁八王子支部は16日、全員に無罪判決(求刑はいずれも懲役6カ月)を言い渡した。(朝日新聞)

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■まあ、妥当な判決でしょうね。
この事案を起訴するなんて検察は何を考えているんでしょうか。
政治的圧力でもかかったの?
「イラク派兵反対」というビラの内容が気に食わなかったのかな。

■この事案は住居権表現の自由との対立が問題になります。
わかりやすく説明します。




■住居侵入罪が保護する法益は、住居権。
これはプライバシー権の一種です。
住居権ってのは重要な権利ですよ。
自由に物を考え、自由に日々を暮らしていくためには必要不可欠な権利です。

■例えば、知らないおっさんが平気で家に入ってくるなんてことは絶対に許されませんよね。
おちおちエッチなビデオを見ることができません。
常に警戒しながら見ないといけない。
そんなの嫌だ。
集中できない。
住居権はとても重要な権利なのです。

■一方で、表現の自由も重要な権利です。
とりわけ政治的表現の自由はとっても重要。

■例えば、私たちは選挙で投票をしますよね。
あれやこれや考えて私たちは投票をします。
でも考えるだけじゃ答えは出ない。
一定の情報がないと答えは出ません。
情報をもとに誰に投票するかを考えます。

■でもそれで「正しい」結論が導き出せるかわからない。
そこで、誰かに自分の意見を聞いてもらう。そして感想を聞く。
批判、同意、反論、賛成・・・議論は続くよどこまでも・・・
そうやって自分の考えを、より「正しいもの」に近づけていきます。
これが民主主義社会なんですね。
その前提として表現の自由が守られていることが必要なんです。

■さて今回の判決ですが、被告人は官舎敷地内に入ってビラを配布しました。
ビラを配布する行為が住居権を侵害するほどの違法な行為と言えるのでしょうかね?
そのぐらいよろしいやん。

■そりゃ、もちろん、住人に「帰れ!」と何度も言われているのにもかかわらず無視して配り続けるということまでやったら、やり過ぎで違法性を帯びるとは思うけどね。
住居権の不当な侵害になっちゃう。
でも、そこまでの行き過ぎた行為にまで至らないのなら、構わないのじゃない?

■ビラ配布ってのは、誰でも気軽にできる表現手段であり、特に表現手段を持たない社会的立場の弱い人たちにとっては唯一と言ってもよい重要な手段です。
この手段を奪っちゃだめですよ。

■「右」系の一部の人たちにはこの判決を快く思わない人がいるみたいだけど、「右」系の人たちもビラ配りをすればいいやん。
ビラ配りは、憲法で保障された表現の自由の行使です。

■文句を言われたら、判決の
「住民のプライバシー侵害の程度は低く、ビラ入れが憲法で保障された政治的表現活動の一つとして民主主義社会の根幹をなすことを考えれば、刑事罰に値するほどの違法性はない」
という文章を引用して反論すればいい。
どうです?

追記:毎日新聞を読んでいると、刑事訴訟法の権威である渥美東洋先生のコメントが。
渥美先生によると、「ミスを犯した判決」だと。
憲法21条と住居の不可侵を定めた憲法35条が衝突した問題だけに、双方をもっと慎重に比較したうえで判断して欲しかった。日本では政治的自由が主張されすぎて私的領域への個人の自由への配慮が不足している。ミスを犯した判決だと思う。
渥美先生がこう仰っているのなら、やっぱり表現の自由を尊重すぎた「ミスを犯した判決」なのかな。
もうちょっと事実関係を詳細に検討した上でもう一度考えてみようっと。

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by asatte_no_houkou | 2004-12-17 02:49 | 犯罪・刑罰・裁判
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