てっちゃん(宮崎哲弥氏)が語る『ナショナリズム』その3
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■続きです。
てっちゃん(宮崎哲弥氏)が語る『ナショナリズム』その1
てっちゃん(宮崎哲弥氏)が語る『ナショナリズム』その2

■次に、てっちゃんは次のような説を紹介します。
ナショナリズムは新興国家や再建国家においては確かに重要な意味を持つが、日本のように安定した成熟国で勃興することはむしろ弊害が大きい、とする説がある

■ここでいう「弊害」とはおそらく、少数者を排除したり、差別や迫害の標的にすることだと思います。(ファシズム)
ナショナリズムの勃興によりこのような弊害が生じるのではないかということ。
これは重要な問題です。

■てっちゃんはこの説に対して以下のように反論をします。
一見理に適った、現状に照らして妥当な見方にみえるが、成熟社会の意味が正確に捉えられていない。
成熟社会の最も顕著な特質は、成員の多重帰属性が高まるということに他ならない。
それに対応してアイデンティティも分散的になる。
こうした社会の住人はもはや、たった一つの集団やたった一つの共同体に専属専従することはない。
家族への愛情も、会社への忠節も、地域への愛着も、あるいは宗教に対する帰依心も、民族に抱く同胞意識も、各々「私」を構成するアイデンティティの一要素に過ぎない。

こうした環境の下では、ナショナリズムの確保が困難になってくる。
近代国家はそもそも生活者にとって実感的に把握し難い、抽象的で複雑で大規模な機構であり、新聞やテレビのようなナショナル・メディアによってはじめて可視化される存在だからだ。

情報伝達経路の多岐化やグローバル化に連れて、国家を身近に引き寄せていたナショナル・メディアの相対化が進めば、一般国民にとって国家事項は「間遠い現実」となる。

■成熟社会とは、正確には「成熟した近代社会」のことで、「過渡的な近代社会」と対立する概念です。
過渡的な近代社会において、人々は巨大な欠乏を共有し、それゆえに欠乏を埋めるという共通の夢を抱きます。
ところが成熟した近代社会では人々は共通の夢を抱かなくなった。
豊かになり、夢が実現されてしまったからです。
それ故、何が良きことかは人それぞれになりました。
価値観の多様化ですね。

■このような成熟社会においては、ナショナリズムが民族や文化といった具体的な内容と結びつくことは少ないように思います。
となると、少数者差別などの弊害が生じることは一般的に考えられないのではないでしょうか。
(もちろん全く弊害が生じないとは言い切れないので、多文化主義の採用などが必要に思う)

■むしろ、てっちゃんが縷々説明するとおり、ナショナリズムの勃興により生じる弊害よりもナショナリズムが確保できないことによって生じる弊害のほうが大きいように思われます。
日本のような成熟した社会においては、ナショナリズムの確保が難しいのです。

■てっちゃんは続けてこう主張します。
その一方で、ナショナル・メディアによってセンセーショナルに取り沙汰され、ショーアップされた人物や事件だけに興味が向く傾向が強くなり、国事全般に対する関心はむしろ衰弱していく。
「激情政治」化、「観客民主主義」化などと呼ばれる自体だが、この受身の姿勢がいっそう進めば、国に依存するばかりで、その運営に全く責任を持たない国民が多数を占めてしまうだろう。
これこそが先進的な民主国家に共通する内在的な危機の核心である。

近年、先進諸国において、新興国とは違った意味で「社会的資源としてのナショナリズム」が求められているのは、この危機への意識的、無意識的な対応と考えられる。

■近年の投票率の低下からもわかるとおり、日本人は国家の運営に全く関心がありません。
まるで他人事。
自分たちが一生懸命働いて納めた税金が、官僚や政治家によって無駄に使われようが全く無関心。
次世代に残していくべき環境が破壊されようが無関心。
小泉がお得意の拡大解釈で憲法を蹂躙しても全く無関心。
なのに、マスコミによってショーアップされた若貴の兄弟ゲンカには異様な関心を示す。

■私はてっちゃんの言うとおり国家の民主的運営に参画し責任を負う動機付けの確保が社会的資源として必要のように思います。
その動機付けとなる社会的資源がナショナリズムなのです。
こうした国際的な潮流を無視し、日本国内のミクロな動向だけを焦点化して「ぷちナショナリズム」「癒しとしてのナショナリズム」といった粗雑な概念で全体状況を総括するような議論が横行しているが、現状分析として信頼性を欠いており、昔ながらの「時評的レトリック」「マーケティング的ラベリング」以上のものではないといってよいだろう。

■これは香山リカと小熊英二への批判ですね。
妥当な批判だと思います。

つづく
てっちゃん(宮崎哲弥氏)が語る『ナショナリズム』4

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by asatte_no_houkou | 2005-06-17 10:07 | 国家・ナショナリズム・愛国心
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