「愛国心」「国益」とは何か - 4象限の『論壇思想マップ』をチラシの裏に書いてみました
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■サイゾー2004年2月号に載っていた「当世論壇思想特定チャート」を参考にして、チラシの裏に4象限の論壇マップを書いてみました。
あなたはどの立場でしょうか?

■縦軸が、ボーダレス重視と国家重視。
横軸が、近代主義と前近代主義です。




■社会学者の宮台真司によれば
近代主義とは、他者に危害を与えない範囲で個々人の自由を保障する社会制度を擁護する考え。

前近代主義とは、「他者危害の禁止」を超えて、人々を善き道徳へと導こうとする考え。
のことのようです。

■この二つの考え方のどちらかを採るかによって、国益と愛国心の意味が異なってきます。
近代主義の立場では
国益とは、計算可能な国民の利益のこと。

愛国心とは、国民の利益になるよう国家を操縦しようとする志のこと。
「計算可能な国民の利益」とは、おそらく貸借対照表上に数値化できる国民の利益の意味なんだと思います。
前近代主義の立場では
国益とは、国民が一億総玉砕しても守るべき国家の尊厳のこと。

愛国心とは、崇高なる精神共同体と一体化して身を捧げる志のこと。
となるようです。

■日本は都市化が進み、共同体が空洞化していきました。
それ故に、これまで人々の行動を秩序づけてきた道徳や価値観が共有されなくなりました。
善き道徳が何かが人それぞれ、あるいは共同体によって区々になったのです

■物の豊かさが達成された日本のような複雑な社会においては、このような状況は不可避です。
最早、善き道徳を万人が合意する事態はありえないのではないでしょうか。
ですので日本が採りうる選択肢は、近代主義しかないと思います。

■次に国家重視とボーダレス重視についてですが、宮台さんによれば
国家重視とは、国家という単位が世界や社会の秩序を保つ上で必要不可欠と考える立場。国内的には警察、国家間においては軍隊や国連といった国同士の調停機関を有効に運営して秩序の維持を目指す。

ボーダレス重視とは、国家重視とは逆に、「国家=暴力装置=悪」と考え、国境のない世界こそ、真に幸せな世界であると考える。これは、いまや化石化した左翼残党の立場。
だそうです。

紛争が生じた場合、最終的には、私たちは警察・司法権力にその処理をお願いすることになりますが、その処理の実効性を確保するためには、合法的な実力の行使を警察・司法権力に委託する必要が生じます。

■さらに、社会のメンバー全員を拘束するための正統な決定手続を継続させる必要があります。
ですので、国家廃絶(ボーダレス重視)という選択肢は考えられないと思います。
従って、国家重視の立場を採用するべきではないでしょうか。

■となると、今の日本においては、国家重視の近代主義の立場(④の立場)が最も妥当だということになると思います。
ちなみに、日本の二大政党である自民党と民主党は、どちらも国家重視の近代主義政党です。
④の立場内部での争いですね。
「新自由主義」を基本的な考え方とする自民党と、「第三の道」(新しい社会民主主義)を基本的な考え方とする民主党です。

新自由主義とは、政府による規制や保障を撤廃・緩和し、市場にお任せをして、民間企業の自由な活動を推進しようとする思想(格差拡大傾向)

第三の道とは、市場経済と個人主義を前提としつつも再配分政策を実行し、格差拡大に歯止めをかけ社会的連帯を維持しようとする思想(格差縮小傾向)


【追記】
宮台真司は「近代」と「前近代」の説明の最後にこう書かれています。
もちろん近代主義者も個人的には、死して守るべき国家の尊厳といった”ロマン”を持ちうる。
が、それは国益といったようなパブリックなタームの中に入る(法的な拘束力を持たせる)べきものではなく、個人が心情の論理として、それぞれ追求すればよいと考える。
社会科学者の小室直樹は、この立場ですね。
小室は、徹底した近代主義者でありながらも、一方で熱烈な天皇主義者です。
小室先生は、日本の誰よりも近代社会と民主主義を理解されたウルトラデモクラティクトですが、彼がそうなったのは、極右天皇主義者だからなのです。
当時の今上陛下(昭和天皇)が、日本国民の子々孫々を思って、日本の近代化と民主主義化をお望みになったからこそ、それに応えようというのです。
(宮台真司著『憲法対論』平凡社新書)
過剰な合理主義・理論過剰の背景には、不条理な情念・非論理的なモチベーションというものがあるのですね。

【「チラシの裏に書いてみました」シリーズ】
『国家をめぐる政治思想マップ』をチラシの裏に書いてみました
『憲法改正をめぐる言論マップ』をチラシの裏に書いてみました

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by asatte_no_houkou | 2005-10-21 01:42 | 国家・ナショナリズム・愛国心
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