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【幼女連続誘拐殺人事件】宮崎勤被告の死刑確定 - 刑法39条削除論
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■世間を震撼させた幼女連続誘拐殺人事件。
宮崎勤被告の死刑が確定しました。
この裁判の最大の争点は、刑事責任能力
Excite エキサイト : 社会ニュース
判決理由で藤田宙靖裁判長は、最大の争点だった、善悪を判断して行動する能力(刑事責任能力)の有無について、「極端な性格的偏り(人格障害)で精神障害ではない」として完全責任能力を認めた1、2審の判断を「正当と認められる」と支持。その上で「性的欲求や死体を撮影した珍しいビデオを持ちたいという収集欲に基づく自己中心的、非道な動機で、酌量の余地はない」と死刑の理由を述べた。

刑法39条にはこのように書かれています。




(心神喪失及び心神耗弱)
第39条 
1 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

「心神喪失者」とは、精神の障害により行為の是非を弁別し、またはその弁別に従って行動する能力がない者をいいます(是非弁別能力または行動制御能力が欠ける者)。
要するに、事の良し悪しを判断できない人、あるいはその判断に従って自分の行動をコントロールできない人のことですね。

「心神耗弱者」とは、精神の障害により行為の是非を弁別し、またはその弁別に従って行動する能力が著しく低い者を言います(是非弁別能力または行動制御能力が著しく低い者)。

「罰しない」とは、犯罪不成立の意味です。
「その刑を減軽する」は、文字通り、刑を軽くするということですね。

■では、なぜ39条のような規定があるのでしょうか。
ザクッと大雑把に説明します。

意思自由論という立場があります。
これは、キリスト教を基礎とする考え方なんですが、端的にいえば、人間は他から制約されず自発的な決定に基づいて意思決定できるという考え方です。
刑法学ではこのような考え方が一般的なんです。(大雑把に言えば)

■この考え方にたって責任の根拠を説明するとこうなります。
人間は、自由に意思決定が可能である(意思自由論)。
だから違法な行為以外の、他の行為も選択することができた。
にもかかわらず、あえて違法な行為を行った。
だから責任を問える。

■心神喪失者・心神耗弱者には「自由な意思決定」ができるでしょうか。
心神喪失者・心神耗弱者は、違法行為を犯す自由な意思も、犯さない自由な意思もありません(あるいは減弱している)。
つまり「自由な意思決定ができ、他の行為も選択できたにもかかわらず、あえて違法な行為に出た」とは言えないのです。
だから違法な行為の責任を問えない。
39条はこのように考えるのです。

■しかし、このような考え方には批判的な論者が多いです。
そこで今回は、てっちゃん(宮崎哲弥氏)の「刑法39条削除論」を簡単にご紹介したいと思います。(詳しくお知りになりたい方は、てっちゃん(評論家の宮崎哲弥氏)の本をお読みください)

なぜ精神障害者による犯罪は処罰されないのか?
これではまるで被害者のヤラレ損ではないか。
犯人に理性的主体性が存しようが存しまいが、善悪の弁識や行動制御の能力が完全であろうがなかろうが、犯罪の結果は少しも異なりはしない。
もし行為者自身の責任が問えないというのなら、そのように他害の危険性のある行為者を「野放し」しているものの責任を問うべきである。(『正義の見方』新潮OH!文庫)

精神疾患を理由として、犯罪を行った者を処罰しなかったり、減刑したりするというのは、近代刑法がおよそ精神障害者を人間扱いしていないか、一般健常者よりも著しく劣る存在として処遇していることに他ならない。
これは端的に差別ではないか。
先にも触れたように、とりわけ起訴前鑑定に「異常」が認定された場合、その被疑者には無罪の推定も及ぶことはなく、裁判を受ける権利すら奪われてしまうのだ。(同書)

実務的には触法精神病者に対する入院措置を刑罰に準ずるものと規定し直し、入退院については、行政や精神科医ではなく裁判所が判断するということでもいいんです。
ただし、予防拘禁、保安処分には私は絶対反対ですから触法精神病者の特別な処置入院の期間は、通常の刑期をもって上限とするとしなければならない。
例えば、懲役13年の刑に相当する犯罪を犯した精神病者は、13年以上特別な措置入院を強制されることはない。
例えば治っていなくとも、13年後には必ず措置解除しなければならないし、3年間で治療し、社会復帰可能と裁判所が判断した場合には13年を待たずに解除できる。
そういうふうに制度を改変すべきだと思うんですね。
無論制度面での整備も重要で、特別な措置入院を一手に引き受ける、特別司法精神病院を設立する必要があります。(『M2われらの時代に』朝日新聞社)

■皆さんはいかがお考えでしょうか。
健常者が精神障害を装って刑を免れようとする事案が多数存在していると聞きます(宅間守)。
このような状況においては、39条見直しの議論をしていくことが必要なのではないか。
そのように思います。
国民的議論が必要です。

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by asatte_no_houkou | 2006-01-20 19:54 | 犯罪・刑罰・裁判
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