寝屋川教職員殺傷事件公判を傍聴して・・・
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少年に無期懲役求刑 小学校内殺傷事件
大阪府寝屋川市立中央小学校で昨年2月、教職員3人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた卒業生の無職少年(18)の公判が14日、大阪地裁(横田信之裁判長)であり、検察側は「社会を震撼(しんかん)させた犯罪史上まれにみる重大事案。被害の大きさなどを考えれば最も厳格な処遇で臨むべきだ」として、無期懲役を求刑した。
弁護側は最終弁論で「少年院による矯正教育が望まれる」と、家裁への移送を求め、結審。判決は10月19日に言い渡される。
公判では殺意の有無や、少年の刑事責任能力などが争われてきた。

■昨日は時間があったので、この裁判の傍聴をしてきました。
大阪地裁201号法廷です。
被告人が少年である事件(逆送)の傍聴は今回が初めてだったので、警備の厳重さに少し戸惑いました。
おそらく被告人の姿を撮影されないようにするための配慮なのだと思います。
審理中も終始、裁判所職員が傍聴人を監視していました。



■まず被告少年の印象ですが、「まさか、この少年が!」てな感じですかね。
色白で小太り(新聞報道によると逮捕後10キロ太ったそうです)、髪の毛は丸坊主、めがねを掛けていました。
どこにでもいそうな、おとなしそうなタイプの少年でしたね。

■2時間半ほどの弁論が行われたのですが(休憩10分)、少年はじっと前を見据えたまま微動だにしませんでした。
最後に少年の最終陳述が行われたのですが、弱弱しいか細い声で便箋に書いた文章を読み上げていました(被害者に対する謝罪の気持ちを述べた)。
こんな少年があのような凶悪な犯行に及ぶとは・・・
大変に意外な感じがしました。

■極々簡単に争点をまとめたいと思います。
詳しい点は各新聞に載っていますので、詳細をお知りになりたい方はそちらをご覧ください。

【殺意】

■少年は「殺すつもりはなかった」と陳述しています。
少年の持つ広汎性発達障害の特徴として「嘘をつくことができない」という点があるそうですが、そのことを勘案すると少年の陳述は信用できそうな気がします。
実際、公判において少年は、不利な点(例えば「再犯を起こすかもしれない」との陳述)をも含めて正直な陳述をしていました。

■検察側は客観的な間接事実、例えば殺傷能力の高い包丁を用い手加減することなく、しかも体の中心部を狙って刺しているという事実などを挙げて、少年の殺意を立証しました。

■一方、弁護側は、凶器の形や傷の位置など従来の殺意認定方法を、障害のある被告人に用いることは適切ではない、と主張しました。
これは要するに、広汎性発達障害を持つ者は一つの行為をし始めると徹底してその行為を行おうとする特徴を有しており、検察側の挙げる事実では広汎性発達障害を持つ者の殺意の立証はできない、ということです。
弁護側は、被告人は刺すこと自体が目的だったのであり、傷害の故意しかなかったと主張しました。

【求刑】

■検察側は、「長期間にわたって隔離し、施設内で十分な時間を掛けて処遇し、犯罪性が十分に払拭されたことを見届けた上で社会復帰させるのが相当」として無期懲役を求刑しました。
理由として
・ 現行少年法の立法趣旨社会常識といった点、
・ 絶対安全であるべき小学校で起きた無差別殺傷事件であり社会に与えた不安感は甚大である点、
・ 広汎性発達障害の治療は少年刑務所でもできるという点、
・ 被告人は「出所したら再び犯罪を犯すかもしれない」と述べている点、
・ 被告人は反省をしていない点(日記に「おっさん一人殺したぐらいで自分の人生が駄目になるのはおかしい」と書いていた)
などを挙げていました。

■一方、弁護側は、「少年院で処遇すべきだ」として大阪家裁に移送する決定を求めました。
理由として
・ 広汎性発達障害の治療は少年刑務所では困難であって、ノウハウと経験がある少年院で行うのが最適であるという点、
・ 少年刑務所での服役はかえって再犯の危険を高めるという点、
・ 刑務所で懲役刑に服させるよりも少年院で処遇するほうが被告人とっては「厳しいもの」となるという点、
・ 裁判で証言をした家裁調査官、少年鑑別所技官などの専門家全員が「少年院での処遇が相当である」と証言していた点、
・ 障害のために反省の念を抱きにくい点
などを挙げていました。

【責任能力】

■検察側は、広汎性発達障害はあるが、それでも善悪の区別や行動制御能力に問題はなく、完全責任能力があったと主張しました。
理由として、
・ 被告人は犯行前にバスを利用し、吟味した上で包丁を購入し、食堂で定食を注文するなどの行為をごく普通に行っている点、
・ 犯行の直前、「子供を殺したり、重傷を負わせたりすると、刑務所に入った後、他の受刑者からいじめられるのではないか」といった功利的な理由から子供を刺すことをやめているという点
などを挙げていました。

■一方、弁護側は、発達障害が犯行の背景にあり十分な責任能力があったと言えない、と主張しました。
理由として、
・ 従来の責任能力概念の枠組みは広汎性発達障害を想定していないため、「完全に責任能力あり」と単純に判断をすることはできないという点
などを挙げていました。

事案の重大性、被害の甚大さから考えると、裁判所は、検察の求刑通り「無期懲役」の判決を言い渡すと予想します。
判決は、10月19日午前10時に大阪地裁で言い渡されます。

【拙ブログ関連記事】
【寝屋川・教職員殺傷】広汎性発達障害を持つ少年への処遇は如何にあるべきか

【追記】
広汎性発達障害を持つ者の犯罪率は、健常者の犯罪率に比べて低い。
≪広汎性発達障害≫
対人関係やコミュニケーションの障害、興味の偏りなどを特徴とする発達障害の総称。自閉症やアスペルガー症候群などが含まれ、全国に120万人いると推計される。半数程度は知的障害のない高機能群とされ、周囲が障害に気づかないこともある。
『湯浅の事件簿』より

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by asatte_no_houkou | 2006-09-15 20:11 | 犯罪・刑罰・裁判
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