日本社会における『内部告発』とは何か
a0029616_12414731.jpg

■近頃は企業の不祥事が頻発しています。日本ハム、東電、浅田農産・・・
これらの事件に共通すること。
それは内部告発が事件を明るみにしたということです。
内部告発。戦後の日本ではほとんどおこなわれませんでした。

■アメリカなどでは内部告発は日常茶飯事。
告発をした者は英雄扱いです。
「よくぞ、告発してくれた!」
外部ではもちろん会社内部においてもその人は尊敬されます。
社長に褒められます。「君はわが社の誇りだよ。」と。(注1)

■ところが、日本では全くの逆。
内部でも外部においても軽蔑されます。
「裏切り者!」と糾弾されます。嫌がらせをされます。後ろから「ゴツン!」と殴られます。
終いには会社を追い出されます。
どうしてなのでしょうか。




■国民性の違い?
確かに、日本人は聖徳太子の17条憲法にあるとおり、「和をもって貴しとする」ことが求められています。
とにかく、仲間同士が仲良くする事がいいことだと。
しかし、内部告発があまりなされなかった根本的な理由は別にあると思います。
それは何か?
それは戦後、会社が共同体(コミューン、ゲマインデ)になってしまったからです。

■敗戦後、昭和天皇が人間宣言をし、天皇主義イデオロギーに基づく共同体は崩壊しました。戦前、日本人は天皇と言う権威のもと一体となっていたのです。(日清・日露で大勝利!)
しかし、敗戦後、天皇主義は事実上忘れ去れてしまいました。
さらに、高度成長により村落共同体も崩壊しました。
そこでどうなったか?

アノミーです。つまり無連帯です。
人間は連帯なくして生きていけません。
連帯がなくなると、規範が喪失して無秩序になる。物事に対する関心がなくなってしまう。
終いにゃ、自殺する。
敗戦後、日本人はアノミー状態になりました。

■そこで、アノミーを収束したのが、学生紛争。そしてその後の新左翼。
そして会社です。(その他、カルト宗教などがあります。)
会社が共同体になったのです。(注2)
「会社が共同体に?! べつにいいじゃん。」
いや、よくありません。

■本来、会社は機能集団です。(注3)収益を上げることを目的とした機能集団です。
ところが、その会社が共同体になった。
共同体は機能集団と違って、存在自体が目的。共同体の維持が何よりも大切。外部の規範なんてどうでもいいや。
「外部規範?そんなの普遍的な規範じゃない!会社内部は内部の規範で賄う。」
共同体の特徴は二重規範にあります。そこでは外部における規範が内部においては通用しません。
外部じゃダメだけど、内部じゃオッケーになります。

■会社が共同体になった証拠。それは終身雇用と年功序列。
こんなの戦前にはなかった。戦後になってできた雇用慣行です。

■で、その共同体。
共同体の維持が重要な目的となる。内部で違法行為が起きた。
そりゃ違法なんだから、国の法律が適用される。
場合によっては逮捕者が出る。損害賠償を請求される。本来そのはず・・・

■でも、会社は共同体。
内部者は必死になってその違法行為を隠そうとする。
だって、明るみになると共同体が危機に陥ってしまう。
「そんな事は嫌だ。居場所がなくなる!アノミーになる!無連帯になる!」
そこで一致団結。
例えば、薬害エイズ事件。
必死になって当時の厚生官僚は書類を隠した。菅直人が探し出すまで、必死に隠した。
「人がたくさん死んでるんだよ。何隠してるんだよ!」
そんな至極当然の理屈が通じない。
内部告発なんてあるわけない。

■でも、去年は内部告発が多くなされた。(らしい。)
でもそんなことをして大丈夫?
未だに会社は共同体なんだよ。
告発者を保護する法律を作ったとしてもダメなんじゃないか。

■ただ、若い世代には会社を共同体だと感じてない人が多くなっているようだ。
私の友人にも転職をした人が何人かいる。
機能集団が共同体の役割から解放される日は近いのか。

■しかし、日本は労働力市場が未だ形成されてないんだよね。
あのマルクスが言ってるように、資本主義の特徴は労働力市場の形成にある。(あと、証券市場も。)
なのに、資本主義社会であるはずの日本においては労働力市場が形成されてない。

■労働力市場が形成されている国では労働者は自由に転職ができる。
今の会社が嫌になったら、簡単に別に会社に行ける。給料のいいライバル会社へ転職。
以前のキャリアはちゃんと評価されるから安心安心。
また1からスタートじゃない。

■ところが、日本にはそんな市場はない。
また1からスタート。
これも会社が共同体になっちゃった結果なのか。

会社が共同体の役割から解放されて、純粋な機能集団となるのはいつの日か。
一方で、会社が共同体でなくなった時に生じるアノミー(無連帯)はどうなるのか。

誰か教えて。

(注1)アメリカでの会社は純粋な機能集団ですから、「わが社の・・・」という表現はおかしいですね。
(注2)機能集団とは「特定の目的を持ち、それを実現するために必要な働きを効果的になすべく結合した集団」のことです。
(注3)共同体とは「血縁・地縁・感情的なつながりを基盤とする人間の共同生活の様式、相互扶助と相互規制を主眼とする組織」のことです。

参考文献:「小室直樹の資本主義言論」など

この記事が面白かった/興味深かったと思った方は→人気blogランキングへ
[PR]
by asatte_no_houkou | 2004-06-20 17:18 | 社会の時間
<< 【衆院選】「政権交代なくして改... 『愛国心』が面白いほどわかる >>