最高裁「精神鑑定を尊重しろ!」 - 被告人の責任能力
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東京・北区の傷害致死:最高裁「精神鑑定、尊重を」 被告の責任能力で初判断
 ◇統合失調症被告
 統合失調症の被告の責任能力が争われた事件の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は25日、「精神医学者の鑑定は、公正さに疑いがあったり前提条件に問題があるなどの事情がない限り、十分に尊重すべきだ」との初判断を示した。そのうえで心神喪失と判断した精神鑑定を採用せずに被告を有罪とした2審・東京高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

 判例では、無罪となる心神喪失や刑が減軽される心神耗弱に当たるかどうかは、精神鑑定のほかに生活状態や動機なども総合的に考慮して裁判所が判断。今回の判決は、判例を踏まえつつ、責任能力の判断にあたって精神鑑定結果を重視するよう求めたものだ。市民が参加する裁判員制度を見据え、裁判員が短期間で判断しやすい基準を示したといえる。

 この事件は、03年に東京都北区で元雇い主の男性を殴って死なせたとして塗装工(39)が傷害致死罪で起訴された。1、2審で計2回実施された精神鑑定はともに心神喪失と結論。1審は鑑定に基づき無罪としたが、2審は「犯行態様に異常はなく、当時の状況も詳細に記憶している」と鑑定結果を採用せず懲役3年を言い渡した。小法廷は「鑑定の信用性は高く、2審が挙げた事情では責任能力があったとはいえない」と指摘した。【北村和巳】
毎日新聞 2008年4月26日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/04/26/20080426ddm041040041000c.html

■いや~これは重要判例ですね。
かつて最高裁は



「被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所にゆだねられるべき問題であることはもとより、その前提となる生物学的、心理学的要素についても、上記法律判断との関係で究極的には裁判所の評価にゆだねられるべき問題であり、専門家の提出した鑑定書に裁判所は拘束されない(最決昭和58年9月13日)」
と判示しました。

■今回、最高裁は、この昭和58年に示した判断を前提として
「生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については、その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重して認定すべきものである(最判平成20年4月25日)」
と判示しました。

■そもそも責任能力があるか無いかの判断ってのは、
① 生物学的要素、つまり行為者に生物学的な精神障害(例えば精神病)があったかどうかという点
② 心理学的要素、つまり物事の是非を判断することができ、その判断に従って行動できる能力があるかどうかという点
この二つの要素をともに考慮すべきだって言われています。

■今回、最高裁判所は、「生物学的要素とか心理学的要素とかってのは専門的なものなんだから、裁判官は精神医学者などの鑑定人の意見をよほどのことがない限り十分に尊重しろよ!」って判断したわけですね。

■まあ普通に考えてみたら「そりゃそうだ!」って感じもしますね。
わざわざ専門家である鑑定人に鑑定させたんだし、そもそも裁判官は法律の専門家ではあるけど精神医学の専門家じゃないんだしね。

■今までは精神鑑定を行った鑑定人の判断が十分に尊重されてきたわけではありませんでした。
その背景には、増加した覚せい剤中毒患者の犯罪に厳しい態度でのぞむべきとの風潮があったみたいです。
多くの鑑定人は、覚せい剤中毒患者を心神喪失者と鑑定したみたいなんですね(心神喪失の場合、犯罪は成立しない)。

■まあ、これはわかるけど、上の新聞記事にあるように、これから裁判員制度が始まるわけです。
素人の裁判員が、目の前にいる被告人の責任能力を判断しなければならなくなる。
この判断は難しい。
となると、「鑑定人の判断を尊重すべき」との今回の最高裁の判断は妥当なんじゃないかな。

■ただ、これからおそらく刑法39条が適用され無罪となるケース(心神喪失)、あるいは刑が減軽されるケース(心神耗弱)が増えてくるかもしれませんね。
となると、これからますます刑法39条の問題(改正するべきかどうか)がクローズアップされることになることでしょうね。
あと、精神鑑定のあり方もクローズアップされてくることでしょう(宮崎勤(現在死刑囚)の幼女誘拐殺人事件における精神鑑定を思い出せばわかるとおり、精神鑑定というのは鑑定人によって判断が分かれる)。

【拙ブログ関連エントリー】
【幼女連続誘拐殺人事件】宮崎勤被告の死刑確定 - 刑法39条削除論

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by asatte_no_houkou | 2008-04-27 01:47 | 犯罪・刑罰・裁判
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